今回紹介するのは、秋里 和国さんの【TOMOI】です。
名作は何年たっても名作で、何度も読み返したくなるもの。
まっさらな気持ちで読んでほしいので、あまりネタバレはしたくないのです。
ただの同性愛をテーマにした漫画ではなく、人類愛や世界平和に通ずるものがあります。
読後感は、重く切なく痛くそしてキツイ、けれど美しい。
ネタバレを含みますのでご了承ください。
【TOMOI】のあらすじ
NYから帰国した 友井 久嗣(ともいひさつぐ)は、失恋の憂さ晴らしをするため後輩の 雪弘(ゆきひろ)に会いに行く。
そこで雪弘には彼女・利保(りほ)がいることを知る。
それが面白くない 友井 は、2人の仲を壊してやろうと 利保 の親友・愛(あい)と共謀する。
けれどその結果、2人の仲を深めることになってしまい、失意のもと再びNYへと渡る。
月日が経ち、友井 の横には新しい恋人・マーヴィン がいた。
しかし マーヴィン には妻がおり、妻は絶対に別れないと言っている。
そんなとき、マーヴィン の体調が悪くなっていることに気づく。
【TOMOI】の感想
前作【眠れる森の美男】の感想記事に
『「BL」というよりも「ゲイの世界」と言った方が正しいかもしれません。』
って書いたけども、今作は 友井 久嗣 という男の人生を描いた作品。
前半のコミカルからだんだんシリアスになっていき、ラストへの展開の落差が衝撃的。
前作では「きれいなキングスイングリッシュを話す」と言われてた 友井 が、物語の終盤では「ドクターの英語はNYなまりですね」って言われてることに、NY生活の深さが伝わってくる。
初めて読んだのは高校生のときで、
「こんな見知らぬ異国の地で誰にも知られずに死んでしまうなんて、友井 をあんなに愛しく想っていた家族は、このことを知ったらどれだけ悲しむんだろう」
くらいの感想だったけど、大人になった今読み返すと、「当時のゲイに対する偏見」や「エイズという病気」のこと、「戦争で失う命がたくさんあること」などいろんなテーマがあることに気づく。
「神がもう死んでもいいというまで生きなけりゃだめなんだ!!」
「神がもう死んでもいいといったのかっ!」
「神よ・・・もう・・・死んでもいいですか」
死にたいと思った時には死ねず、生きたいとやっと思えた時には命を落としてしまう。
なんとも不条理だ。
そこに救いはないのかもしれない。
けれど最期に見た空が青くて良かったと思う。
【TOMOI】のあらすじと感想:まとめ
後半はシリアスで読み終わったあと「人生とは・・・」なんて哲学的なことを考えてしまう作品なのだけど、前半の下ネタのヒドイこと(褒めてます)
「導尿カテーテルを入れっこしよう」だの「ナット巻が太い」だの(笑)
リヒャルト の時は受けだったけど、マーヴィン の時は攻めだね。なんてことを考えて読後の逃避をしたり。
最近のBLは読み飽きたという人、ぜひ読んでみてください。
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